■ジョルジュ――ニーナにとって、もう一つの「もしも」
ファイアーエムブレム 紋章の謎において、ニーナの伴侶候補はマルスかハーディンの二択しかなかった、というボア司祭の考えに対して、一石を投じたいと思います。
もうひとつの可能性の存在、それは、ジョルジュの存在です。
彼はアカネイアの有力貴族の息子であり、大陸一の弓兵とも言われるほどの人物です。彼には強い背景、武勇があり、マルスやハーディンほど目立ちはしませんが、その生い立ちや彼自身がゲーム内で語る忠誠心が、彼の「ふさわしさ」を物語っていると、私個人は愚考します。
ジョルジュは「打算的で冷徹」と評されています。しかし、作中の言動を見ていると、そこには一貫した理性と信念があり、そして何より、ニーナという個人に対する忠誠が見え隠れします。
「オレはニーナ様には忠誠をちかうが、ハーディンは好きになれない」
「昔のアカネイア王国をとり戻すために、あえて祖国に弓をひく」
この言葉から、彼が従ったのは国家ではなく個人、王女(王妃)ニーナの理想や志だったのだと思います。
また、ジョルジュはゴードンをはじめとする部下の成長を見守り、国の乱れに冷静な目を向けることのできる人物です。圧力に対して冷めた目で状況を判断し、状況や内心抱えているであろう憤怒の感情に流されることなく、かといって誇りと責任は忘れない。ニーナの理念を現実に変える力を、あるいは支えるだけの度量を持っていました。彼がそばにいたのなら、ニーナはもう少し、楽に息ができていたかもしれない。そんなことを、ふと思うのです。
ニーナが求めていたのは、カミュであり、彼の愛でした。その愛に囚われ続ける彼女を、冷静に待ち、理性的に支えてくれる可能性を、彼は秘めています。ニーナへの忠誠心、彼の貴族としてのバックボーン、部下の成長を見守る手腕は、政治面でも発揮された可能性もあるでしょう。
アカネイアの貴族である分、ハーディンが直面した「外様」という反発も、彼なら少なかったはずです。そして、オレルアン騎士団の重用を避け、アカネイア騎士団を遇し、王家への忠誠心を高める一助を担えた、そんな気がするのです。
「こうなるしかなかった」と言われるニーナの悲劇に、別の道があったのかもしれない。
そんな「もしも」の一つとして、ジョルジュという選択肢を想像してみても、きっと無駄ではないように思います。
個人の感想です。彼のバックグラウンド、ゲーム中のセリフを見ていたら、あれ、もしかして…と思った末の妄想の産物です。
現実問題は別として、彼という選択肢もあったんじゃないかなあっていう願望です。