汗ばんだ薄い皮膚を甘く噛む。
 敏感なそこに軽く立てられた犬歯の痛みに、背がたわんで震えた。
 金色のおくれ毛が張り付き、妙な色気を醸し出すそこに、うっすらとついた歯の痕。それほど強くつけられたわけではないそれは、一晩も経てば消えてしまう程度の儚いもの。
 それでも妙な征服感を与えられて、ぐ、と熱がこもる。
 途端に小さな悲鳴が聞こえた。
「ちょ……っ、なんで、」
 ぶるぶると掴んだ腰が小刻みに震えている。ふー、ふー、と荒い呼吸を繰り返しながら、白い手がぎゅう、と枕を掴む。
 何でも何も、どう説明したものかシドーにさえわからない。ただ、何だかぐっと来た。そのせいだ。
 答えきれず、さあな、と短く返すのみにして、シドーはぐい、と震える腰を引き寄せた。ぐちゅ、と聞くにたえない水音が響く。
「ひ、あ……っ」
 掠れた悲鳴はシーツに落ちて、少しくぐもっていた。身体を支える腕が震えているのが見てとれる。今にもくずおれそうな細い二の腕は、やはり白い。そのやわらかい皮膚にも咬みついてやりたい衝動がシドーを襲うが、あちこち噛むと後で文句を言われるのがわかりきっていたから、我慢した。その代わりに、容赦なく腰を穿っていく。
 逃がさないように固定した腰を引き寄せ、思いきり打ちつける。肌がぶつかり、中がうねるのが感じ取れた。
「……は、」
 時折、不意に持っていかれそうになる。息を吐いて堪えながら、今度は緊張する肩に歯を立てる。びくついて、思いきり締められたがあらかじめ予想していたから、容易く耐えられた。
「や、……もう、噛むな……ぁ…っ」
 それは、痛いからか。それとも、それにすら感じてしまうからか。
 おそらく後者だろうとわかるのは、抗議の声が甘く上擦っているからだ。痛いのがイイ、なんて。とかそんなくだらないことを考えているに違いない。
 ふるふる、と首を振る。やわらかい金髪が揺れて、いやいやをしているようだが、それすらも今は扇情的に見えるのだとそろそろ理解してほしい。
 シドーはふ、と笑うと、いよいよ本格的に腰を使いだした。
 ぬるい交わりは終わり、昇り詰めるそれに取って変える。
 痕の残る首筋のうまそうな様に舌なめずりをして、咬みつく代わりに皮膚を吸った。けれど、シドーが与える強い快楽にもみくちゃにされて、もう何をされているのかも理解できていないビルドは、身体も支えられずいつの間にかくずおれて、甘い嬌声を響かせながら悶える。
「あ、ア、……も、…だめ」
 小さな声が合図となって、ラストスパートをかける。白い肌はいつしか淡く朱が走り、受け入れる愉悦の強さを物語っていた。
 狭い中の奥を突いて、ぐりぐりと先端を押しつける。その頃にはどこもかしこも悦いのだろう、ひと際大きく身体を跳ねさせて、ビルドが先んじる。それを追いかけるように、熱く狭い内部に劣情を注ぎ込み、シドーは深く息をついた。
 絶頂の余韻は痺れるようで、充足感も交えて倒れこみたいような感覚に襲われる。しかし、相変わらず眼下にあるそれがうまそうで、そちらに意識をとらわれればごくりと喉が鳴った。
「………んっ、あ、……し、シドー……っ」
 あ。
 組み伏せたビルドの抗議の声の理由など、考えるまでもない。
 うまそうなビルドが悪い、と熱がまた集まったそれを穿っていく。
 多分明日は相当怒られるだろうな。なんて予想が簡単につくが、まあ仕方ない。
 シドーはちっとも恐くないだろうビルドの怒った顔を想像して笑みを深めた後、咬み痕とキスマークを重ねるように唇を寄せた。